35番ゲートの聖域と、数奇な運命の『詫び767』

金浦空港の国際線ターミナルは、仁川に比べれば驚くほどコンパクトです。 しかし、19時11分。私が向かった35番ゲートの前には、修行僧にとっての「聖域」が静かに、しかし力強く存在していました。(金浦空港アシアナラウンジ滞在記はこちら)
掲示板に表示された『Diamond / Star Gold / Business Class』の青いライン。
この優先レーンを通り、誰よりも早くボーディング・ブリッジを渡る瞬間。
それは、厳しい修行を乗り越えて「ダイヤモンド」の称号を維持し続ける者だけが味わえる、最高のご褒美です。

そして、今夜私を羽田まで送り届けてくれる相棒が、窓の外で羽を休めていました。 ウイングレット(WL)を装着した美しいシルエットが特徴の、JA622Aです。
実はこの機体、航空ファンの間ではちょっとした名機。ボーイング787の納入遅れをカバーするために投入された、いわゆる「詫び767」というドラマチックな背景を持つ、機齢15年のベテラン機なんです。
『767見分け方トリビア』
- 国内線専用の767-300ER(非ER含む)は、時刻表で「76P」と表記されます。
- 対して、今夜のような国際線仕様機は「76E」。
この「76E」、実は間合い運用で国内線を飛ぶこともあります。 もし国内線で「76E」の表示を見かけたら、それは「国際線ビジネスクラスのシートに国内線料金で座れる(プレミアムクラス)」という、最高にラッキーなボーナスステージの合図。 見かけたら迷わず「買い」の一手です。
ただし、この「76E」には一つだけ『何気にでかいデメリット』があります。 国内線仕様の76PはWi-Fi完備ですが、国際線仕様の76Eは、現在わずか1機(JA623A)を除いてWi-Fi非搭載。 今回搭乗したJA622Aも、残念ながらネットの届かないデジタル・デトックス機材でした。 今の時代、空の上で実況できないのは少し寂しいですが、だからこそ味わえる「景色と自分だけの時間」が、ここにはあります。
76Eの光と影。至福のシート vs 絶望のWi-Fi
いよいよ機内へと足を踏み入れます。
B767-300ER(76E)のビジネスクラスは、最新のスタッカードシートではありませんが、2-1-2という独特のシート配列が大きな特徴です。

中央にポツンと配置された1人席は、通称「艦長席」。 サイドに大きなカクテルテーブルがあり、プライベート感はあまりありませんが、修行僧に人気の席。ですが、今回は窓際の4Aをチョイスしました。

幸運にも隣が空席だったため、2席分に近い広々とした空間を独り占め!足元を見れば、短距離路線には十分すぎるほどの広大なスペースが広がっています。

フルフラットにする時間なんてほとんどない金浦-羽田線において、このサイドテーブルの使い勝手の良さと、視界に誰も入らない開放感は、まさに「修行のご褒美」と言えるでしょう。
しかし、ここで「影」の部分にも触れておかなければなりません。 冒頭でもお伝えした通り、この76E(国際線仕様機)の最大の弱点は、「Wi-Fiが(ほぼ)使えない」という点です。
国内線仕様の76Pなら当たり前のWi-Fiサービスが、このベテラン機には搭載されていません。 「順次搭載工事中」との噂もありますが、今のところは「Wi-Fi非搭載機に当たる確率の方が圧倒的に高い」のが現実です。 仕事やSNSの実況を予定している修行僧の皆さんは、搭乗前にオフラインで楽しめるコンテンツをダウンロードしておくことを強くおすすめします。
シャンパン、夜景、そして怒涛のワンプレート
離陸後、ベルト着用サインが消えると、そこからは短距離路線の「時間との戦い」が幕を開けます。
金浦-羽田線という、実質2時間弱のフライト。ウェルカムドリンクやおしぼりのサービスは省略されますが、その分、上空での「最初の一杯」への期待は高まります。

修行僧の特権、キンキンに冷えたシャンパンを一口。Wi-Fiがない機内だからこそ、目の前のエンタメやスマホに邪魔されることなく、純粋に「空の上の時間」を味わえます。

窓の外を見れば、そこには言葉を失うほどの夜景。 この光の海を独り占めしながらシャンパンを傾ける……これこそが、数多の「苦行」を乗り越えたダイヤモンド会員へのご褒美ではないでしょうか。
お食事は、この路線お決まりの「ワンプレート」形式です。


選択肢はありませんが、逆に言えば「迷う時間さえ不要」な合理的なサービス。彩り豊かな前菜と温かいメインを夢中で楽しんでいると、機内モニターに映る自機は、あっという間に地元・大阪の上空を通過していました。
ビジネスの快適さと、追い風(テイルウィンド)のいたずら。まさに「時空をワープした」かのような錯覚に陥る、贅沢な2時間でした。
22時の羽田。静寂のT2と、再会の約束
夢のような2時間は瞬く間に過ぎ去り、21時58分、JA622Aは羽田空港の滑走路へと滑り込みました。

降機して掲示板を確認すると、時刻は22時08分。ここから入国審査へと向かいますが、2026年現在の入国には少し注意が必要です。

今回はVisit Japan Webを利用しましたが、導入当初とは状況が変わっています。 今や半分以上の利用者が登録しているため、逆に専用レーンが混雑し、操作に慣れていない方々で時間がかかってしまうという逆転現象が起きているのです。 「手荷物預けなし」の修行僧でも、ここで15分〜20分のロスを覚悟しなければならないのが、2026年現在のリアルなボトルネックかもしれません。
無事に入国し、第2ターミナル(T2)のランドサイドへ出ると、そこには衝撃的な光景が広がっていました。

普段は多くの旅人で賑わうANAのカウンターも、照明が落とされ、人影は皆無。
このがらんとした巨大な空間を独り占めできるのは、この時間に到着する国際線便を利用した者だけの特権です。
そして翌朝。私は再びこの場所に戻ってきました。 行き先は、南国・石垣島。 搭乗した機内の窓から外を眺めると、そこには昨日お世話になったあのJA622Aの姿が!

また会ったね」と心の中で呟きながら、私の2026年ダイヤ維持修行・第1弾は幕を閉じました。 しかし、修行は終わらない。
翌日は朝からフライトが控えてます。その前にしっかりとした休養が必要になります。今回は、比較的空港に近いホテルマイステイズ羽田に宿泊しましたので、こちらの滞在記もぜひ目を通してみてください。
次回は、いよいよ旅の最終地。石垣島です。その前に羽田のスイートラウンジへ。お楽しみに♪


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